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わたしのブログ

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続きです。

遥か向こうに五島列島が見えてきた。間違いなく日本だ。見れば、藁葺き屋根に日の丸の旗が立っていた。やっと安心した。
 大きな横断幕に、引き揚げの皆様、大変ご苦労様でした。恙無くふるさとにお帰りを祈っております。わたしたちはすぐに収容所に入り、フロに入った。やれやれと思っていると、全員診療所に連れて行かれた。わたしは上等兵になり
、途中死別した佐藤、桜木の死亡確認報告をすると「その人の町名だけでも思い出してください。」と言われたが駄目だった。県名だけは報告してきた。両名には気の毒だが奉天のドサクサで覚えていないのである。受付の女性たちは「不可抗力なのでお察しいたしますが、この中で性病、妊娠等どんなことでも良いけれど、この際恥ずかしがらずに後でここに申し出てください。国が責任を持って治療します。そして、きれいな体になってふるさとにお帰りくださるよう何卒お願いします。」・・・・とのことだった。先週帰った藤枝節子と言う奥さんに会ったという人が「あの人、中絶したようだ。」と言っていた。やせて青白い顔をして笑っていたらしいけれど、・・・。大連でわたしが一番世話になった人で、北村さんにもこの人の紹介がなければ逢うこともなかったことになる。今は入院中で、あれから相当苦労したらしい。その当時の事が走馬灯のように駆け巡ってきた。


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